遅くなりましたが、9月末に
ネパールで、チベット医学を学ぶ学生たちへ鍼灸講義をしてきました。
きっかけは、昨年、ネパールの「TCP:チベタンチルドレンプロジェクト」(チベット難民の児童養護施設)を訪れたとき、
「次に来るときは施術やボランティアとして力になれたら」という思いが生まれたこと。
そして今年、滞在の予定を連絡したところ、
「チベット医学を学ぶ学生たちに、日本の鍼灸を教えてほしい」
という身に余るご依頼をいただきました。
彼らはチベット医(アムチ)になるために、
6〜7年もの間、チベット仏教の哲学を学び、
『四部医典』という医学書(鍼灸についての記載もあるそうです)を体得し、
時にはヒマラヤの山中で命懸けの薬草採取実習をする、
まさに、TCPのちあきさんがおっしゃる通り、文化遺産のような存在。
ただ、その独特な医学体系ゆえに、アムチになっても欧米などでの活躍の場が限定される厳しい現状があるそうです。
「日本の鍼灸という技術を身につけることで、彼らの活路が見いだせないか」
という、切実な願いが込められたご依頼でした。
その思いに、僕も全力で力になりたい!と強く思いました。
引き受けたはいいものの、「日本の鍼灸って、これだ!」というものがあるわけでもなく、
何を教えれば役に立ってもらえるか、全く思い浮かびませんでした。
そこで、いつもお世話になっている先生方や、今年6月に現地で講義をされた先輩鍼灸師の先生に相談させていただきました。
先生方からの貴重なアドバイスと、僕自身が普段の施術で最も大切にしていることを組み合わせ、
「触れること」「皮膚の質感」「ツボの取り方」
を軸にすることに決めました。
講義形式ではなく、ペアワークを多く取り入れ、実践に即した内容になるよう工夫しました。
当日は、会場がまさかの立派なチベット寺院。
その聖域感、張り詰めた空気感に緊張度MAX。

経絡の流注(るちゅう)[気血の流れる方向]と逆方向に沿って「なでる」ことから始め、
術者と受け手がお互いにどう感じるかを体験。
そして、ツボの位置にある皮膚の微細な質感の違いを見つける訓練。
みんなでツボだと思う場所にシールを貼って確認し合ったりと、
自分の身体と向き合いつつも、ペアの方との違いを感じるうちに、
学生さんたちも僕も、どんどん緊張がほぐれていきました。

質問もどんどん飛び交い、確認に走り回ったりと大忙し。自然と和気あいあいとした雰囲気に。

後から、教官の先生まで一緒に参加してくださっていたと聞いて、びっくり!
2時間予定だった講義は、白熱してあっという間に3時間。
翌日も含め、無事2日間の講義を終えることができました。
講義の後、「自信になりました」「とても喜んでいます」という、
学生さんの温かい感想をいただき、本当に胸が熱くなりました。

校長先生からも、お礼にとお寺で作られているお香や薬膳茶までいただき、大感激!

そして「来年もぜひ」と、ご依頼までをいただきました。
もちろん、二つ返事で快諾。
また来年、この場所に戻ってくることをその場で約束しました。
今回、講義という形で自分の施術や考えをアウトプットする中で、
学生さんや教官の先生方からの鋭い質問に答える経験は、僕自身の知識と技術に対する自信にも繋がりました。
ホント、やってみないとわからないことばかりです。
この素晴らしい機会をくださった、TCPのちあきさん、
そして、講義準備にあたり的確なアドバイスをくださった、けむけむ先生、
素晴らしい通訳をしたくれたチミ君、
改めて感謝申し上げます!
チベット医学という文化遺産と、日本の鍼灸という技術を繋ぐ、架け橋のような時間を過ごすことができました。
この経験を、今後の施術にも必ず活かしていきます!

そして、来年もよろしくお願いします。