昨年から続くチベット医学生への2日間の講義。
今回リクエストされたテーマは、『腰や下肢の痛み・しびれをどうとらえるか』。
腰から足先まで関係する症状は範囲が広く、原因や状態もさまざま。
限られた時間のなかで、何を説明し、どんな実技を行えば、実際の臨床に役立つ内容になるのか。
構成を考えるのは、なかなか大変な作業で、
なんとかA3サイズ両面3枚にまとめきりました。
意外にもこういう講義資料をつくる作業、好きな自分を発見。
順序立てて整理し、相手に伝わる形にする。
自分の頭の中にあるものを一度ほどいて、組み立て直す作業は、
普段の施術を見つめ直す機会にもなりました。
今回の講義では、5月、6月に講義を担当された先生方が伝えてくださった内容も振り返りながら、
チベット医学生の皆さんが、立派なチベット医となり、
世界各地で活躍するようになったとき、日本スタイルの鍼灸技術も大きな武器になる、
僕はそう強く感じています。

今回、特に伝えたかったのは、症状が出ている場所だけにとらわれず、
身体全体を観察し、実際に触れ、指先から得られる情報をもとに治療を考えること。
経穴の位置を知識として覚えることは、もちろん大切。
ただ、名前や位置を暗記するだけでは、

自分の指で身体に触れ、皮膚や組織の状態、左右差、圧痛、その他の反応を感じ取る。
その情報をもとに、どこに治療点を求めるのかを考えていく。
同じ症状であっても、身体の状態は一人ひとり違います。
だからこそ、一つの症状を一つの原因に結びつけて考えるのではなく、
さまざまな可能性を考慮しながら、
目の前の身体から答えを探っていく姿勢が大切だと思っています。
今回の実習では、学生の皆さんに実際に身体に触れてもらい、
指先で反応を探しながら、治療につなげていくことを体験してもらいました。
知識として知っていることと、自分の指先で感じ取れること。
その両方が結びついたとき、学んだ技術は臨床のなかで活きてくる、
僕の短い臨床経験の中でわかっていることの一つです。
今回の講義を通して、改めて感じたこと。
触れることは治療の入り口であり、鍼灸師が自分で考えるための大切な手段でもある。
日本の鍼灸には、多様な考え方や技術があり、それぞれの鍼灸師が臨床のなかで工夫を重ねていく自由さもある。
一つの方法だけが正解なのではなく、目の前の患者さんの身体を観察し、自分で考え、よりよい方法を探っていく。
その姿勢も、日本の鍼灸の魅力の一つであると感じています。
今回の講義が、学生の皆さんにとって、知識や技術を学ぶだけでなく、
講義を行った医学校の隣では、ちょうど基礎工事が進められていました。
話を聞くと、ネパールやインドにもない規模の、大きなチベット医学の病院が建設されるとのこと。
チベット医学を学ぶ学生たちの成長、
建設が進み、病院が形になっていく様子を、これからも見届けられたらと思っています。

こうした機会をいただけたことに、心から感謝しています。
今回の経験を一度きりの講義で終わらせず、次につなげていくこと。

僕自身も臨床を重ねながら学び続け、
また彼らに伝えられることを増やしていきたいと思います。