先月は「医療功夫学会」に参加してきました。
武術の稽古を通して、自分自身の感覚、 “センサー”を丁寧に磨いていく。
そのセンサーは、相手のわずかな動きや意図、気配を感じとるためのもの。
このセンサーの「感度」が上がれば、患者さんの身体の小さな変化や声にならな”にも自然と気づけるようになるという視点には、深く共感。
また、太極拳の動きについても本来は「相手がいることを前提とした動き」であること。
自分の動きをただ整えるのではなく、他者との関係性の中で調和を取ることが大切だと。
身体の使い方ひとつで、施術の質も変わる。改めて、日々の所作を見つめ直す良い機会になりました。
そして、もう一つ、関西万博へ。想像以上のスケールと、刺激に満ちた場所。
事前予約が取れたパビリオンのひとつ、「いのち動的平衡館」。
ここでは動的平衡とエントロピー、そして鍼灸施術との関連において考えさせられる内容。
人間の身体は、常に栄養を取り入れ、老廃物を排出し、エネルギー交換を行いながら変化しています。
細胞や分子レベルでも、分解と再合成を繰り返し、生まれ変わり続けています。
生物学者・福岡伸一先生は、このような「変化し続けながら秩序を保つ状態」を動的平衡と呼びました。
見た目は同じ形を保っているように見えても、実際は流れの中で保たれている一時的な秩序なのだと。
一方で物理学にはエントロピーという「無秩序へ向かう傾向」を示す概念があります。
宇宙全体も時間の経過とともに秩序が崩れ、エネルギーは使えなくなる方向へ進みます。
身体も放っておけば冷えや痛み、疲れ、老化など秩序の崩れが進行していきます。
生きるとは、このエントロピーの流れに逆らい、秩序を保ち続けることです。
そのためには外部からの介入が必要です。
食事はその代表例で、食べ物が持つ秩序を利用して、自分の身体の秩序を再構築しています。
そして鍼灸施術も、この外部からの介入のひとつです。
鍼や灸は、微細な刺激を通じて「流れ」を無理に変えるのではなく、その軌道を調整します。
「この部分に少し偏りがあるかもしれない」という情報を身体に伝えることで、新たなバランス点へと導きます。
この「秩序の流れを呼び戻すと」ことをより意識して施術に取り組んでいこうパビリオンで強く思いました。
鍼灸は、身体との深い対話を通じて、自然な動的平衡を取り戻すお手伝いができると考えています。
万博全体、大屋根リングとも、まさに「場の気」に満ちた空間。
クウェート料理やバーレーン料理も各国のビールも美味しかった。
様々な国のパビリオンを巡っていたら時間もあっという間。
まだまだ余韻に浸っています。
今月もよろしくお願いします。
【お知らせ】
9月15日(月)~24日(木)お休みします。
ご不便おかけします。
よろしくお願いいたします。